海外旅行をするようになったきっかけの一つは、
大学受験での世界史の勉強だと思う。

丸暗記が苦手な自分にとって、
歴史の勉強はひたすら苦行だったけれど、

大学受験の時に、河合塾の世界史の先生(神余先生、お元気かなぁ)のおかげで、
大好きな科目に変わった。


本当に、歴史を愛する、マニアックな方で、
歴史の物語はいつも細部に入り込み、
授業は1時間、2時間オーバーはあたりまえ。


高校での授業の7割は睡眠学習をしていた私だけれど(先生方、ごめんなさい)

その先生の授業は、学校の授業を受けた後に19時から、延長して22時くらいまででの時間帯で、
マックスで眠くなる時間帯のはずなのに、
私は一度も寝ることがなかった。



先生のおかげで、
第一志望の大学に受かったのだと思っている。




その先生の最後の授業の時のこと。
いよいよクライマックスだ、今日はどんな話が聞けるんだろう、
何時間オーバーするんだろう、とワクワクしていた私の期待とは裏腹に、
先生は、淡々と、定刻通りに授業を終えた。

拍子抜けしている私たちに向かって、
最後に、こう先生は言った。

「お前らはどうせ、受験が終わったら、ここで習ったことなんてほとんど忘れちゃうんだよ。
でも、これからも、自分で、世界史の本を読んだり、映画を見たりして、興味を持ち続けてくれよ」


伝えられることを全て終えて、
ふてくされたように、放り出すように言ったその言葉が、
なんだか切実に自分の胸に響いて、


先生の予言した通り、
私は習ったことの大半を忘れてしまった(当時は、忘れるなんて想像できなかった)けど、

私は今も、先生のだした最後の宿題を、
少しずつ進めている。

歴史の映画を見て、
歴史のある街に飛び立って。




今思えば、
先生がくれたのは、

ただの大学受験をパスするためのツールではなくて、
大きな箱のようなものだったのだと思う。



私は、暇を見つけて、
時間を作って、

本を読み、飛行機に乗り、
いろんな時代の、いろんな場所の物語を、
少しずつその箱につめていく。

忘れたり、思い出したりしながら。



一生をかけて埋めていく、大きすぎるギフトをもらっていた。


先生、私はついにベルサイユ宮殿に行きましたよ。
フランス史を勉強しなおしましたよ。


一対一では、ほとんど話をしたこともないような恩師に、
心の中で報告をしながら、

旅は続くのでした。