フランスのホテルにたどり着いて最初に驚いたのは、
エレベーターの「開く」ボタンはあるけれど、「閉じる」ボタンがないこと。

ボタンの前に立った私は、
他の乗客のためにも早く閉じないと、と思うのに閉じられなくて、
もどかしく感じたけれど、(今思えば、他の人はなんとも思ってなかったかも)

何回か乗ればすぐに慣れた。

エレベーターのドアを数秒早く閉めることで、
私はなにを節約していたんだろう。


パリは、他の国と同じように、
日本ほどはサービスが良くなかった。

でも、日本ほど、サービスに対して不満を抱いてる人もあまりいなかったと思う。


日本ほど治安がよくないし(駅でマリ●ナ吸ってる人がいた)、
日本ほど衛生的でもない(いろんな場所が、文字通り「小便臭い」)。


でも、そういうもんだと思えば、
そういうもんみたいだった。



ヴェルサイユ宮殿に行った時、
宮殿内を走る、有料のシャトル電車に乗った。

電車はガタガタと揺れて頼りなく、
駅にたどり着く前に止まってしまった。


車掌が、「止まっちゃったから歩いて」的なことを言って、みんな、おとなしく電車を降りて歩いた。
みんな、まぁ、しゃーないな、こういうこともあるわな、くらいの感じだった。


責任者出てこい!とか、返金しろ!とか
青筋を立てて怒鳴るおじさんはいなかった。


旅行をしている一週間、しょっちゅうこういう場面に出くわした。




私たち日本人は、まじめで、几帳面で、折り目正しく、
そのために、
他の人も同じようにふるまわないと苛立ってしまう。



サービスの質はとても高く、
デフォルトのレベルが高いあまりに

怒りの沸点は低くなり、
少しの不備にいらいらする。


サービスが行き届くことによって、
「怒ってもいいこと」のリストがどんどん長くなる。


料理の提供が遅れた。
態度が悪い。
説明が足りなかった。
梱包が悪い。



怒る理由がたくさんあるから、
みんな、ますます怒るし、
ますます怒られる。


カスタマーは不機嫌だし、
スタッフはストレスで身体を壊す。




あと、フランスの会社で働く日本人が、
仕事をもっと根詰めて進めようとした時、

フランス人の上司がこんなことを言ったそうだ。

「君はなんでも突き詰めすぎる。
そうすれば、たしかに仕事の結果はもっとよくなるかもしれない。

でも、そこに注ぎ込む作業の量を考えろ。一緒に働く人のことも考えろ。取引先にも、君にも家族がいる。
一番大切なことは仕事じゃない」


か、、、っこいい!


こういうことを言えるのは、個人の素質だけじゃなくて、社会の制度設計の問題なのだと思う。

日本では、そういうことを言いたくたってなかなか許されない。


フランスでは、
前提として、仕事に100%の力をだしきらなくても、
トラブルがあっても、
ストライキがあっても、
社会がそれなりに回るようにできているんだと思う。



機械が壊れたので間に合いませんでした〜
ストライキがあったので行けませんでした〜
と言えば、


それに対して、
それじゃ、しょうがないね、大変だったね〜

というやりとりが(多分)普通なんだと思う。



日本では、
みんな120パーセント働いて、トラブルは全力で回避して、トラブルが起きたら寝る間も惜しんで300パーセントのエネルギーで解決する、というように

全てがスムーズにいくことを前提にいろいろが設計されているから、
なにかが止まった時、混乱や怒りや絶望が訪れる。

本当は大したことないことでも。  





フランスでは、
店員が忙しそうにしていたら、声をかけてはいけないんだって。

空気を読まずに声をかけたら、次からは無視されるそう。笑

店員にも人権があるし、仕事の進め方があるから。


日本だと、店員に人権てあんまりないよなぁ。
自分の責任じゃないことでも怒られ続けたり。

あと、日本では、具体的な解決よりも、
「私のこの怒りをなんとかしろ」型の人が多い気がする。

フランスでは、多分、
そういうのは認められないし、無視されて終わりだろうなぁ。

個人の感情は個人の問題で、
店員が対処するものじゃない。




いろいろ書いたけれど、
日本の安全さ、暮らしやすさは捨てがたい。

常にスリに対して気を張っていなくてもいいし。

飛行機がストライキして飛ばないとか、けっこう困る。
真面目で礼儀正しい日本人が好きだ。

でも、あんまりそれを突き詰めていくと、

たどり着く先は、
汚れのない無菌室とか、
不備や漏れのない、機械に管理された制度とか、

あんまり生きていたくないような世界の姿が見える。


真面目さや細やかさは、
快適さや幸せを目指すためのものだったはず。

でも、勤勉さは、わき目もふらず目の前のことに取り組むことで、
しょっちゅう目的と手段を取り違える。




なんのために頑張ってるのか、
時短、節約をすることで、
削っているものはなんなのか、守っているものはなんなのか。  




立ち止まって考えたい。
忘れないようにしたい。

あんまり怒らずに、笑って許せることのリストを長くしたい。(つい怒っちゃうけど)


真面目で清潔なな国の中で
にこにこ笑って、生き延びられるように。